2026年10月1日から、企業には求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が義務づけられる予定です。就活や転職活動の場で「これって普通なのかな」と迷う場面がある人ほど、今のうちに制度のポイントと自分を守る考え方を知っておく意味があります。
- 「求職者等セクハラ」とは何か、対象になる場面はどこまでか
- 2026年10月から面接や採用面談で何が変わるのか
- 不快な質問や対応を受けたときの考え方、相談先の使い方
こんな方におすすめの記事です
- 面接やカジュアル面談で、どこまでが許容範囲なのか判断に迷っている方
- 恋愛、結婚、容姿、私生活に踏み込む質問が気になっている就活生や転職希望者
- 違和感のある企業をどう見極めればよいか知りたい方
本記事では、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置義務化のポイント、面接や採用面談で注意したい言動、不快な対応を受けたときの考え方をわかりやすく解説します。(専門知識は不要です!)
注:本記事は2026年3月時点で公表されている厚生労働省の資料をもとに作成しています。制度の詳細や運用は今後更新される可能性があるため、最新情報は公式資料もあわせてご確認ください。
求職者等セクハラとは何か
求職者等セクハラとは、採用前の接点で、企業の側の性的な言動によって求職活動や職業選択のための活動が妨げられることです。新卒の学生だけでなく、転職希望者や実習を受ける人も対象になり得ます。詳しい制度の考え方は厚生労働省のハラスメント対策ページで確認できます。
制度上の「求職者等」に含まれる人
対象は、就活中の学生だけに限られません。転職活動中の社会人、インターンシップに参加する人、実習を受ける人など、企業や職場と接点を持ちながら進路や就業先を探している人が幅広く含まれます。つまり、「まだ雇われていないから保護の対象外」と考えるのは適切ではありません。
どんな場面が対象になるのか
対象場面も面接だけではありません。採用説明会、カジュアル面談、OB・OG訪問に近い形の社員訪問、インターン中の接触、オンライン面談なども含まれます。特にオンラインでは、1対1になりやすいことや、私生活の空間が見えやすいことから、対面とは別の注意点があります。
セクハラと不適切質問の違い
「性的な言動として問題になるもの」と、「公正な採用選考の観点から問題になる質問」は、重なることはあっても同じではありません。どちらも求職者にとって重要ですが、論点を分けて考えると整理しやすくなります。
性的な言動として問題になりやすいもの
恋人の有無を執拗に聞く、容姿を性的な文脈で評価する、必要なく身体に触れる、性的関係を求めるなどです。厚生労働省の指針では、面接中の性的な事実関係の質問や、社員訪問時に性的な関係を求める例が示されています。
公正な採用選考の観点から問題になりやすいもの
家族構成、本籍、住環境、宗教、支持政党、尊敬する人物、愛読書など、本人の適性や能力と関係のない事項を採否判断に使うおそれがある質問です。厚生労働省の公正な採用選考の基本でも注意が示されています。
この2つを分けて考えると、「不快だったけれど何が問題なのか言語化しにくい」という状態を整理しやすくなります。性的な言動なのか、適性や能力と関係ない質問なのか、あるいは両方にまたがるのかを落ち着いて見直すことが大切です。
2026年10月から何が変わるのか
2026年10月1日から変わるのは、企業に求職者等へのセクハラ防止措置が義務づけられ、面接や採用面談のルール整備、相談対応、問題発生後の対応まで明確に求められる点です。制度全体の流れは、2026年のハラスメント対策義務化の全体像でも確認できます。
企業に防止措置が義務づけられる
企業に求められるのは、単に「気をつけましょう」と呼びかけることではありません。方針の明確化と周知、相談に応じる体制の整備、相談後の迅速で適切な対応などが必要になります。具体的な考え方は厚生労働省の関連指針で確認できます。
2026年10月から企業に求められる主な対応
- 求職者等に対するセクハラを行ってはならない方針を明確にし、周知すること
- 相談や苦情に対応できる窓口や体制を整えること
- 相談があったときに、事実関係を迅速かつ適切に確認すること
- 被害を受けた求職者への配慮と、行為者への適切な対応を行うこと
- 再発防止に向けて、面談ルールや運用を見直すこと
面接現場で変わりやすいポイント
求職者の立場から見て変化を感じやすいのは、面接や面談の運用です。たとえば、面談の場所や時間帯、1対1での接触のしかた、連絡手段、相談窓口の案内などに、以前より明確なルールが入ることが期待されます。特に、個人の携帯番号や個人SNSでのやり取りを当然のように求める運用は、見直しの対象になりやすいと考えられます。
読者が知っておくべき意味
この改正が重要なのは、採用前の違和感が、入社後の職場環境を見極める判断材料の一つになり得るからです。採用の場で境界線があいまいに見える企業は、入社後のハラスメント対応や相談体制も含めて慎重に見たほうがよい場合があります。もちろん、それだけで直ちに違法と断定はできませんが、企業を見るうえで重い情報ではあります。
面接や採用面談でNGになりやすい言動
面接で問題になりやすいのは、性的な言動と、適性や能力に関係のない私的な質問です。相手が冗談のつもりだったかどうかより、求職者にどんな影響があったか、採用評価と関係があるかが重要な判断軸になります。
恋愛・結婚・容姿などの性的な言動
典型例として挙げられやすいのが、「恋人はいるの」「結婚の予定はあるの」「かわいいね」など、採用評価と関係のない私的・性的な文脈の発言です。厚生労働省の指針では、面接中に性的な事実に関する質問を受けることや、社員訪問の際に性的な関係を求められることなどが例示されています。たとえ雑談のように始まっても、答えたくない内容に踏み込まれているなら注意が必要です。
家族・本籍・思想信条に踏み込む質問
「家族は何をしているのか」「本籍はどこか」「家はどのあたりか」「宗教や支持政党は何か」といった質問は、公正な採用選考の観点から問題になりやすい項目です。厚生労働省の求職者の皆様へでは、令和6年度にハローワークで把握した不適切な採用選考854件のうち、家族に関する質問が多いと案内されています。面接で空気を和らげるつもりの雑談であっても、本人の適性や能力と関係がないなら、慎重に受け止めるべきです。
オンライン面接・カジュアル面談で起きやすいケース
最近は、対面よりもオンラインやカジュアル面談のほうが境界線があいまいになりやすいことがあります。厚生労働省の相談案内では、オンライン面接で「全身を見せて」と言われたケースや、インターン・OB訪問などで食事やデートにしつこく誘われたケース、「恋人がいるのか」と聞かれたケースなどが紹介されています。オンラインだから軽い、カジュアル面談だから雑談してよい、ということにはなりません。
⚠️ 「不快だけど我慢すべきかも」と思い込みすぎないことが大切です
相手が面接官や採用担当者だと、その場で空気を壊したくなくて笑って流してしまうことがあります。ただ、笑って返したこと自体が「問題がなかった証拠」になるわけではありません。違和感が残るなら、その感覚は軽く扱わないほうがよいです。
不快な対応を受けたとき、どう考えればいいか
大切なのは、その場で完璧に反応することより、自分の安全と今後の選択肢を守ることです。うまく言い返せなかったとしても、自分を責める必要はありません。
まずは「我慢しない」でよい理由
「大げさに受け取りすぎかもしれない」と迷うことは珍しくありません。ただ、厚生労働省の相談案内でも、「これってハラスメントかも」と思った段階で相談してよいこと、些細なことでもよいことが案内されています。不快さを感じた時点で、少なくとも自分の中で黄色信号を灯す価値はあります。
その場で無理に戦わなくてもいい
その場で強く言い返さなかったからといって、不適切な対応を受け入れたことにはなりません。状況によっては、曖昧に受け流す、質問の意図を確認する、回答を避ける、早めに切り上げる、後で辞退する、といった選択も十分あり得ます。大事なのは、相手にどう見られるかだけでなく、自分がその企業と今後も関わりたいかを考えることです。
記録・相談・辞退判断の進め方
不快な出来事があったときは、次のような順番で整理すると考えやすくなります。
- 事実をメモする
日時、場所、相手の所属や名前、言われた内容、やり取りの流れを書き残します。メールやメッセージは削除せず保存しておきます。 - 安全面を優先する
個別の食事や飲み会、密室での再面談、私的連絡先でのやり取りなど、負担が大きい接点はいったん距離を置いて構いません。 - 一人で抱え込まない
大学のキャリアセンター、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、新卒応援ハローワークなどに相談できます。 - 企業との関わり方を決める
説明を求めるのか、選考を辞退するのか、今後の接点を限定するのかを、自分の基準で判断します。 - 必要なら第三者の視点を入れる
自分では判断しにくいときほど、相談先に事実ベースで共有すると整理しやすくなります。
厚生労働省の案内では、都道府県労働局への相談は匿名でも可能で、希望がない限り企業に伝えないとされています。相談先の一覧や考え方は、就職活動中等のハラスメント相談案内で確認できます。
企業選びの段階で見抜けるサイン
起きた後に対処するだけでなく、違和感のある接点を早めに見抜くことも大切です。すべてを事前に防げるわけではありませんが、違和感に早く気づけるだけで無理な我慢を減らしやすくなります。企業選びの視点としては、2026年の転職市場動向も確認すると、求人の見方を広げやすくなります。
面接前に見えるサイン
応募前や日程調整の段階でも、違和感のサインは出ることがあります。たとえば、連絡が会社の正式な手段ではなく個人SNS中心、面談場所が曖昧、夜遅い時間の食事を前提にしている、担当者の立場がはっきりしない、といったケースです。もちろん事情によることもありますが、採用の入口で運用が雑な企業は注意して見たほうがよいでしょう。
面接中に見えるサイン
評価基準が見えないまま私生活の話ばかり続く、質問の意図が説明されない、答えにくい話題に執拗に踏み込む、といった場面は要注意です。面接は本来、職務遂行に必要な適性や能力を見る場です。その軸から外れたやり取りが多いなら、企業文化の表れとして受け止める価値があります。
面接後に見えるサイン
選考後に個人的な接触が続く、私的な食事に繰り返し誘われる、断りにくい圧力がある、他社選考の辞退を急かされる、といった行動も判断材料になります。採用後にどう接してくるかの予告編のようなものだからです。違和感が続くなら、「内定があるから」「せっかく進んだから」で無理に正当化しないほうがよいでしょう。
応募前・面接中に見ておきたいチェックポイント
- 連絡手段が会社の正式チャネルではなく、個人LINEや個人SNSに偏っていないか
- 面談の場所、時間、参加者が事前に明確に共有されているか
- 質問が職務内容や働き方に関係したものになっているか
- 答えにくい質問に対して、断る余地や配慮があるか
- 面接後の接触が採用目的を超えて私的になっていないか
安全に就活・転職を進めるための実践ポイント
制度が整っても、実際の場面で自分を守るには「事前に自分の基準を持つ」ことが役立ちます。相手を疑うためではなく、迷ったときに判断を早くするためです。
面談前に決めておく自分のルール
たとえば、「個人連絡先はすぐに渡さない」「1対1の夜の会食には応じない」「オンライン面談では部屋全体を見せる要求には慎重に対応する」など、自分の基準を前もって決めておくと、その場で流されにくくなります。厚生労働省の相談案内でも、採用担当者との食事や飲酒、密室での面談、個人携帯メール等でのやり取りは避けるよう注意が示されています。
困ったときの相談先を先に把握しておく
相談先は、トラブルが起きてから探すより、先に知っておいたほうが安心です。大学のキャリアセンター、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、新卒応援ハローワークなどが案内されています。都道府県労働局の相談は匿名でも可能で、希望がない限り企業に伝えないとされているため、迷う段階でも使いやすい窓口です。就活イベントの参加前に情報収集したい方は、合同説明会・就活イベント情報はこちらもあわせて確認しておくと準備しやすくなります。
企業を見る基準を持つことが防御になる
就活や転職では、「自分が選ばれる側」という意識が強くなりがちです。ただ、採用の場は、企業が求職者を見るだけでなく、求職者も企業を見る場です。違和感を覚えたときに、「自分の受け取り方が悪いのかも」とすぐに引っ込めるのではなく、「この企業は安心して働ける環境だろうか」という視点で見直すことが、自分を守る行動につながります。
よくある質問(FAQ)
カジュアル面談やOB・OG訪問も対象ですか
はい。厚生労働省の指針では、社員訪問やオンライン上のやり取りも含めて考えられており、面接だけに限られません。
面接で「恋人はいるの」と聞かれたら全部違法ですか
個別の事情によって法的な評価は変わりますが、少なくとも採用と関係の薄い私的・性的な質問として、強い違和感を持つべき場面です。
証拠がなくても相談できますか
はい。厚生労働省の相談案内でも、些細なことでも相談してよいとされています。記録が多いほど整理しやすいですが、証拠が完璧でないと相談できないわけではありません。
転職活動中の社会人も対象ですか
はい。新卒学生だけでなく、転職活動中の求職者も対象に含まれます。雇用前の接点だから関係ない、とは考えないほうがよいです。
違和感があった企業は辞退したほうがいいですか
一律には言えませんが、採用段階の違和感は入社後の職場環境を見極める判断材料の一つになり得ます。事実を整理し、必要に応じて相談しながら、自分の基準で判断することが大切です。
まとめ:求職者等セクハラと2026年10月施行のポイント
この記事では、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置義務化について解説しました。
- 2026年10月1日から企業の防止措置が義務化される:方針の明確化、相談体制の整備、相談後の適切な対応などが求められる予定です。
制度の詳細は、厚生労働省が公表している改正法と関連指針で確認できます。
- 面接だけでなく説明会、社員訪問、インターン、オンライン面接も対象になり得る:対面よりカジュアルな場面ほど、境界線があいまいになりやすい点に注意が必要です。
「正式な面接ではないから大丈夫」とは限りません。
- 違和感を覚えたら、我慢よりも記録と相談を優先する:その場でうまく対応できなくても、自分を責める必要はありません。
採用の場は、企業が求職者を選ぶだけでなく、求職者も企業を見極める場です。
就活や転職では、内定や選考通過を優先したくなるものです。それでも、安心して働ける環境かどうかは、早い段階の違和感から見えることがあります。
制度の知識は、相手を責めるためだけでなく、自分の基準を持って企業を見るためにも役立ちます。迷ったときは一人で抱え込まず、公式の相談窓口も活用しながら進めていきましょう。
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